一千万に一人の難病「フルクトース1.6ビスフォスファターゼ欠損症」

先天代謝異常症を持って生まれた彩香、祖母に育てられ病気と共に生きた19年

フルクトース-1,6-ビスフォスファターゼ欠損症

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先天代謝異常症には300種類以上の病気があり、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症はその中の一つの病気です。日本では現在5~7名程の一般には多く知られていない希少難病です。発現率は不明。

先天代謝異常症は、生まれつき体の中の酵素などがうまく働かず、食べ物に含まれている栄養素を吸収したり消化することができなくなるため、必要なものが足りなくなったり不要な物がうまく排出されなくなってしまう病気です。

フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症は糖の酵素の働きが正常に働かなくなってしまうために、体の中の糖が少なくなってしまうと意識レベルが低下して昏睡状態になったり、痙攣をおこしたり、気を失ったまま亡くなってしまうことがあります。(空腹時低血糖、ケトーシス、アシドーシス)

稀少な病気なので専門医が少なく大学病院レベルでも専門医がいない地域もあり、病気の発見や診療、病気のコントロールが難しいため、早期発見できずに発作などで後遺症が残ったり亡くなってしまうことがあります。

代謝異常症の病気の種類によっては生体肝移植などが必要な場合もありますが、主に食事療法で発作が起きないよう病気をコントロールし病状を安定させて日々を過ごすことになります。

フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症の場合は糖の供給を食事療法で切らさないようにして発作が起きないようコントロールする必要があり、本人だけでなく家族や周囲の協力も必要になります。

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※フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症の低血糖時の糖摂取について
フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症は低血糖時にフルクトース(果糖)を摂取すると、さらなる低血糖を引き起こすため、低血糖時には純ブドウ糖の摂取が必要になります。

・このHPをお読みくださった方に教えて頂きました。ありがとうございました。

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先天代謝異常症

先天代謝異常症とは、体に必要な栄養素を上手に利用できない生まれつきの病気の総称です。
知らずに生活していると生命や障がい発症の危険があることがあります。

食べ物に含まれている栄養素はからだの中で消化・吸収され、筋肉や臓器を構成する成分になったり、必要なエネルギーとして使われたりした後、不要になったものは排泄されます。

身体の中で起こるこのような一連の化学変化を代謝とよびます。この代謝をスムーズに進めるために酵素や輸送体というたんぱく質が働いています。酵素は、身体の中に何千種類も知られています。また、輸送体は必要な栄養素を細胞の中に取り込み、不要なものを細胞外に出す働きをしています。

先天代謝異常症とは、生まれつき酵素や輸送体が正常に働かず、「代謝」の流れがせき止められることで、異常なものが身体に溜まったり、必要なものが欠乏したりする結果様々な症状を起こす病気です。

身体の中では、種々の栄養素が代謝されており、その代謝過程に障害を受ける栄養素(有機酸、脂肪酸、アミノ酸、糖など)の種類によって、それぞれ有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、アミノ酸代謝異常症、糖質代謝異常症などと分類されています。

タンデムマス・スクリーニング普及協会
「有機酸・脂肪酸代謝異常症って何? 一般向けガイドブック」より引用(承諾済み)

参照
タンデムマス・スクリーニング普及協会

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先天性代謝異常症の分類

先天性代謝異常症は、代謝がどのように妨げられているかによって分類されています。
アミノ酸・有機酸・尿酸サイクルの代謝異常症
フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、高アンモニア血症などがあります。

糖質代謝異常症

ガラクトース血症、ぶどう糖の貯蔵物質であるグリコーゲンが蓄積する糖原病などがあります。

脂肪酸代謝異常症

からだの重要なエネルギー源である脂肪酸の代謝異常症で、ミトコンドリア病やペルオキシソーム病などに細分化されています)。

リソソーム代謝異常症

リソソームは、細胞の中にある小器官の1つで、袋状をしています。このリソソームの中には、多糖類、脂質、ムコ多糖体などを分解する多種類の加水分解酵素が含まれています。この酵素のどれかのはたらきが欠けると、リソソームの中に分解されなかった物質が蓄積し、病気がおこります。ムコ多糖症、テイ・ザックス病やゴーシェ病などの多くの病気がこの仲間です。

リポたんぱく代謝異常症

血液中の脂質を運搬するリポたんぱくに異常があっておこる病気で、別名、先天性高脂血ともいいます。家族性高コレステロール血症がその代表です。

核酸代謝異常症

遺伝子を形づくる核酸という物質の合成や分解の道筋に異常があっておこる病気で、レッシュ・ナイハン症候群やアデノシン・デアミナーゼ欠損症などがこれまでに見つかっています。

膜担送たんぱく質の異常症

細胞の中に銅を運ぶ銅担送たんぱく質の変異でおこるウィルソン病、メンケス病などがあります。腎臓の尿細管という組織の機能異常も知られています。

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早期発見

新生児タンデムマススクリーニング検査

先天性代謝異常症は、これまで根本的な治療法がなく、症状や苦痛をやわらげる対症療法が治療の中心でしたが一部の病気には、骨髄移植、肝移植、酵素の補充療法が行なわれ、効果をあげています。

先天性代謝異常症のなかには、早期に発見して治療を開始すれば、健康な赤ちゃんと同じように育つ病気もあります。国内では平成26年よりこの先天代謝異常症のうち有機酸・脂肪酸の先天代謝異常症の早期発見ができるようタンデムマススクリーニングが全国でほぼ100%の赤ちゃんに行われるようになりました。

タンデムマススクリーニングとは、治療が出来る病気を発病する前に病気を見つけて治療を始め、赤ちゃんの障がいを予防するシステムです。生後5日程度ですぐに検査ができるようになっています。

以前は、日本では6つの病気を対象にされていましたが、タンデムマス法という新しい検査を導入し、赤ちゃんの負担を増やすことなく20種類程度の病気を検査することが出来ます。

残念ながらフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症は現在、新生児タンデムマススクリーニングで見つけられる対象疾患とはなっていませんが、有機酸・脂肪酸の先天代謝異常症の早期発見ができるようになっています。

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フルクトース1.6ビスフォスファターゼ欠損症